会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
文書作成日:2016/03/10


 坂本工業では、中途採用を進めており、先月、不採用とした人から「履歴書などの応募書類を返却して欲しい」という連絡が入った。これまで書類の返却は行っていなかったため、どのように対応する必要があるのか、社労士に相談することとした。

 3月に入り、春が近づいてきましたね。

 そうですね。春の暖かい日差しが降り注ぐのも、もう間もなくですね。そう言えば、来月はいよいよ新卒の従業員が入社してきますよね。

 はい。今年は2名が正社員として入社してくれるので、入社式を行い、盛大に迎え入れようと思っています。また、来年度入社の採用活動もスタートしましたので、そちらの対応も必要になり、総務部では多忙な日々を過ごしています。今日ですが、この採用に関連することで質問があります。求職者からの応募書類の取扱いについて悩んでいるのですが。

 どのようなことでしょうか?

 選考の結果、不採用となったとき、この応募書類は本人に返却しなければならないのでしょうか?というのも、先日、中途採用への応募があったのですが、不採用となったことから本人に不採用通知書を送付したところ、「応募書類を返却して欲しい」という連絡がありました。今後、新卒の選考もスタートしますので同じような連絡が入る可能性もあり、確認させていただければと思います。

 なるほど。確かにその可能性はありますね。応募書類については、法令で返却しなければならないと定められている訳ではありません。ただ、この応募書類には、氏名や住所、生年月日、中途採用であれば過去の勤務先など、様々な個人情報が記載されているため、個人情報保護の観点から取扱いに注意する必要があります。

 確かに個人情報の固まりですよね。そのため、当社では応募書類をシュレッダーで廃棄していますが、この他、どのような点に注意が必要でしょうか?

 それでは取得の段階から順を追って説明しましょう。まず、個人情報保護法という法律を耳にされたこともあると思いますが、この中で取扱いが定められています。具体的な内容としては、利用目的を事前に公表している場合を除き、応募書類をもらう場合には利用目的を事前に本人に知らせることになっています。ただし、この取扱いはいまのところ、5,000件を超える個人情報を取扱う事業者等に義務付けられており、5,000件以下の場合には努力義務に留まっています。

 個人情報を取扱う件数が多いところは、しっかりとした体制で管理することが求められているのですね。

 そうなりますが、実はこの法律は改正が予定されており、今後、5,000件の要件が撤廃されてすべての企業が対象になる予定です。ちなみに施行日は「公布の日から2年を超えない範囲内で政令で定める」とされており、まだ明確になっていません。

 そのような動きがあるのですね。施行日に向けて、当社でも個人情報の取扱いルールを決めておく必要がありそうですね。

 はい。また、現時点でこの法律の対象になっていなくても、企業においては指針(平成24年厚生労働省告示第506号「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」)が出されており、同じように取扱うことが求められています。

 確かに企業規模に関わらず、しっかり管理することが求められますね。

 以上は取得の段階で注意すべき点をお伝えしましたが、次に利用について解説しましょう。そもそも取得の段階で利用目的を明らかにしていますが、実際に使用するに当たっては、その必要な範囲内で個人情報を収集・保管し、使用することになります。通常、採用活動で取得するのであれば、採用選考とそれに付随する連絡に使うとして利用目的を明示することになることが多いかと思います。となると、採用活動が終わったのであれば、いつまでも応募書類を残しておくことは問題がありますね。

 確かに。すみやかに廃棄する必要がありますね。

 そうですね。以上をまとめると、今回のご質問の応募書類を返却するか否かは、会社の決め事となり、応募書類を出してもらう段階で返却するのか、会社で廃棄するのかその取扱いを伝えておくことがポイントとなります。ちなみに、ハローワークでも求人申込書を提出する段階で、応募書類の返戻について記載する欄があり、「返戻あり」か「求人者の責任にて廃棄」となっています。

 なるほど。最初の段階で伝えておくと、あとでこのような連絡が入ることもありませんね。当社の採用のホームページに明記するなどしておきたいと思います。


>>次回に続く



 今回は、応募時の書類を取扱う際の注意点について解説しましたが、ここで、個人情報の収集の範囲について補足しておきましょう。上記の指針の中で、その収集の範囲が定められており、原則として以下の内容については収集してはならないとされています。

(1)人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
(2)思想及び信条
(3)労働組合への加入状況

 これは応募書類だけでなく、面接において尋ねることも含まれています。そのため、人事総務担当者だけでなく、採用面接を行う者に対してもこの注意点を共有しておきたいものです。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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