会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2015/09/10


 坂本工業の木戸部長は、働きながら年金を受け取る人について、改正があるという新聞記事を目にした。そこでどのように制度があり、どのような改正となるのか、社労士に相談することにした。

 先生、こんにちは。年金は消えた年金問題や、日本年金機構の不正アクセスによる情報流出等があり、関心が高い状態が続いていますね。

 そうですね。いろいろなところで、年金の問題に関する記事を見たり、相談を受けたりします。それにしても、公的年金への信用はかなり失墜してしまいましたね。さて、今日はその年金について、何かご相談があると聞きましたが。

 はい、60歳以上で働きながら年金を受け取っている人が当社にもいるのですが、今年10月から、年金が減額される人の範囲が拡大されると聞きました。どのような人が対象になるのでしょうか?

 なるほど、厚生年金保険と共済年金が一元化することに伴う変更点についてですね。最初に、この働きながら年金を受ける人の年金(在職老齢年金)ですが、本人に支給されている年金の額や給料の額によって、年金が減額されたり、全額支給停止となったりします。ただし、全員が減額されたり、支給停止になるわけではありません。今回は、都合により、「支給停止する」という表現で話を進めますが、減額されず満額支給される人もいるのでご了承くださいね。それでは、年金が支給停止になるケースから確認しておきましょう。支給停止になる人は、70歳未満の人であれば厚生年金保険の被保険者である人、70歳以上の人については、厚生年金保険の適用事業所で勤務し、常用雇用関係がある人です。

 60歳以降も社会保険に加入するような労働日数・労働時間数の人ということですね。逆に言うと、勤務時間が短い人は調整の対象にならないということですか?

 そうですね。この条件に加え、平成27年9月30日までは、昭和12年4月1日以前に生まれた人は支給停止の対象外となっています。そして、平成27年10月1日からは、昭和12年4月1日以前生まれについても支給停止の制度が拡大となります。ちなみに、昭和12年というと、現在、77歳または78歳という年齢ですので、この昭和12年4月1日以前の条件が廃止され、対象者が拡大したとしても、新たに支給停止の対象となる人はさほど多くないと思われます。

 そうですね。本当の熟練工の人や、バリバリ働いている企業経営者・役員というところでしょうか。

 私もそのようにイメージしています。ただ、そういう人になると、給料が高い人も多いかと思います。そうなると支給停止の額が大きくなり、場合によっては年金が全額停止になることもあります。

 その支給停止の額はどのように決定されるのですか?

 はい。考え方は65歳未満と65歳以上の2つに分かれています。まず65歳未満の人については、給料と年金額の合計額が28万円以下の場合、年金は全額支給されます。28万円を超える場合、28万円を超えた分の「2分の1」に対し、年金額が「1」支給停止されます。例えば、給料と年金の合計が30万円の場合、30万円−28万円=2万円となり、2万円×1/2=1万円。この1万円が支給停止となります。そして給料が47万円を超える場合、47万円を超えた分だけ年金額が停止されます。

 なるほど。

 次に65歳以上の人については、給料と年金額の合計額が47万円以下の場合、年金は全額支給されます。給料と年金額の合計額が47万円を超える場合、47万円を超えた分の「2分の1」が支給停止されます。なお、ここで言う給料の額とは、総支給ではなく、厚生年金保険のその月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計を12ヶ月で割ったものを加えたものを指します。また、年金額とは、加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金(65歳以上は、報酬比例部分の老齢厚生年金)の月額を言います。

 かなりややこしいですね。

 はい。この支給停止額の計算については、(1)年齢、(2)年金の額、(3)給料の額、(4)前1年間の賞与の額、(5)加入していた年金制度等、従業員の個別の要素がかなり含まれるため、どうしてもややこしい計算となってしまいます。

 実際には、年金額がいくらになるか、そして会社がいくらの給料(賞与は含まず)を払うことができるかによって、支給額をシミュレーションしてみないと、本人に最終的な額を提示するのは難しいですね。

 おっしゃるとおりですね。ちなみに、この拡大により新たに対象となる人は、平成27年10月1日以降、70歳以上被用者該当届を提出しなければならないため、該当者の有無は事前に確認しておいてくださいね。


>>次回に続く



 今回は、在職老齢年金の説明をしました。年金を受け取りながら働く人で、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受け取る人については、さらに年金が支給停止されることになっています。この額は、給料の額の0.18%〜6.0%となっています。高年齢雇用継続給付の手続きをする場合には、年金額が減額されることも伝えておきましょう。

■参考リンク
日本年金機構「日本年金機構からのお知らせ 平成27年7月号」


 

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